科目名         機器分析特論

英文科目名     Instrumental Analysis

必修選択の別   選択

単位数         2 単位

対象学科       物質工学専攻

学年・学期     2 年・後期

授業形態       毎週1100分の講義(演習を含む)×15

担当教官       岸   浩  (居室 : 物質・電気工学科棟 3)

                  Tel  : 0285-20-2805 (dial in)

                  FAX  0285-20-2887(物質工学科事務室)、 0285-20-2880(庶務課)

                  E-Mail kishi@oyama-ct.ac.jp

授業の概要

 質量分析法は化合物の同定・構造決定・定量に威力を発揮する、優れた方法である。高感度な分析法で、解析可能なスペクトルを得るのにNMR法の106分の1の試料量で良いと言われている。生体関連物質に適用出来るようになって、ますます重要性を増している。これは、MALDI (田中耕一)ESI (J. B. Fenn) 等の新しいイオン化技術の開発、イオントラップ等の新しい装置開発のおかげである。この授業では、質量分析法の基礎から応用まで、やや詳細に取り上げ、理解させ、応用が出来る様にする。

授業目的

 最近発展が著しく、化合物の構造決定の主要な方法の一つである質量分析法について、主に有機応用を目的にその原理、装置、応用を学習する。

(1) イオン化過程の物理化学的基礎及び、質量スペクトルの理論的背景を学習する。

(2) 各種イオン化法についてその特徴を学習し、有機構造決定への応用例を学習する。

(3) 各種質量分析装置について、有機応用から見た特徴を学習する。

達成目標

(1) 電子イオン化、光イオン化過程の物理化学的基礎を理解すること。

(2) 質量スペクトルの擬平衡理論について、その概要を理解すること。

(3) 有機構造決定法の観点から、各種イオン化法の特徴を理解し説明出来ること。

(4) 有機応用を念頭に、各種質量分析装置の特徴を理解し説明出来ること。

(5) MS/MS法の有機構造決定への応用を理解し説明出来ること。

学習保証時間

100(分/週)×15(週/年)=1500(分/年)=25(時間/年)

教科書

教科書を用いず、授業内容を要約したプリントを配布する。

参考書

E. De Hoffman, J. Charette, V. Stroobant , "Mass Spectrometry", Wiley (1996)

Alison E. Aschcroft 著、土屋正彦・横山幸夫訳「有機質量分析イオン化法」丸善出版(1999)

Fred W. McLafferty, Frantisek Turecek, " Interpretation of Mass Spectra", University Science Books,

  Mill Valley, California (1993).

学習方法

予習 : 特に準備は要らない。

授業 : 各回配布するプリントに授業内容が要約されている。授業時間内に内容を整理して理解さ

せるようにする。

復習 : 各回の授業内容に関する例題、演習問題を課し、次回に解答を提出し内容を検討して理解

度の確認とする。数回に1回とまとめて課す場合もある。

キーワード

質量スペクトル、有機構造、イオン化過程、質量分析計、GC/MSLC/MSTOFQMSICR

イオントラップ、CIMALDIESIFABMS/MS

授業内容

1章 イオン化過程

§1. 正イオンとその生成過程

  イオン化ポテンシャル、イオン化効率曲線、イオン化断面積、Auto Ionization、多光子吸収

§2. 負イオンとその生成過程

   共鳴電子捕獲過程、解離共鳴電子捕獲過程、イオン対生成過程、

§3. 表面電離及び高速粒子の表面電離

  Saha-Langmuir式と正・負イオンのイオン化効率、運動エネルギーによるイオン化効率の増大

§4. 難揮発性化合物のイオン化

  化学イオン化法(CI)FABMALDIESI

§5. 質量スペクトルの擬平衡理論(QET; Quasi Equilibrium Theory of Mass Spectra)

   Photo-Electron SpectroscopyBreakdown CurveQET

2章 質量分析装置

§6. 四重極質量分析計

§7. イオントラップ

§8. TOF; Time of Flight Mass Spectrometer

§9. 磁場及び電場を用いる質量分析計

§10. ICR; Ion Cyclotron Resonance及びFTMS; Fourier Transform Mass Spectrometer

§11. GC/MSLC/MS

3章 タンデム質量分析法(MS/MS)

§12. 単分子イオン分解反応

§13. CID; Collision Induced decomposition

§14. MS/MS装置

§15. タンデム質量分析計の応用

授業方法

 各回配布するプリントに授業内容が要約されている。授業時間内に内容を整理して理解させるように授業を進める。授業中に多く質問するように努力させ、授業内容に関して例題を用いて解説する。また、各回の授業で演習問題を課し、次回に解答を提出し内容を検討して理解度の確認とする。

カリキュラムの中の位置付け

 機器分析法は、各々独立の物理的原理に基づいているので、他の機器分析法を学習しておく事は必須ではありません。一般的な化学分析の方法を学ぶという意味で、本科4年の機器分析氈E機器分析、物質工学専攻1年の機器分析特論氓学習しておく事は有意義です。有機・無機化合物の構造を理解するため、本科12年の基礎化学、無機化学、有機化学の初歩が必要です。

この科目を学ぶために先行して理解する必要のある科目

  本科12年 : 基礎化学、無機化学、有機化学(構造、命名法)、一般物理。

この科目と同時に学ぶ関連科目

    なし

この科目の前に学ぶ関連科目

  物質工学専攻1年 : 機器分析特論

評価方法

   中間試験(35%)、期末試験(35%)、演習課題(30%)

連絡事項

  質問がある場合は、いつでも教官室または実験室を訪ねてください。E-Mailでの質問も可です。

学生へのメッセージ

 多くの分析機器の中で、質量スペクトル分析法のみを取り上げますが、やや詳細にわたる部分もあるかと思います。わかりやすく説明することを念頭に置いて講義しますが、理解困難な時はいつでも相談してください。