状態フィードバックとPID制御との等価問題


關 好志
(指導教官 笠原 雅人)



1.研究目的
 全ての状態変数をフィードバックするのが,現代制御理論に基づく制御系の設計法である。本研究では,1入力1出力の系について高次導関数からのフィードバックゲインを省略した場合、3つのパラメータで構成されるPID制御系と比べ,制御系の特性に実際どの程度の違いが生ずるかを探求する。

2.研究概要
 制御対象の状態をある初期状態から定められた最終状態まで与えられた評価関数を最小とするような入力 u(k) を決定する問題を最適制御(LQ制御)という。1入力1出力のプラントの状態方程式,出力方程式と,評価関数は下記のようになる。
離散時間系におけるプラントの状態方程式は,

x(k+1) = A x(k) + B u(k) (1)
y(k) = C x(k) (2)

ここで,x(k):状態変数,u(k):入力変数,y(k):出力変数,A:システムマトリクス,B:入力マトリクス,C:出力マトリクスである。最小とすべき評価関数は

J=1/2 納x^T(k) Q x(k)+ h u^2(k)] (3)

ここで,Q:半正定対称行列 入力、 u(k)の重み係数を示している。Q,hは,プラントの特性を考慮し設計者が値を定める。
 (3)式より与えられる必要条件の下で状態フィードバックゲイン F を決定する。LQ制御系にI動作(積分動作)を組み込んだものがLQI制御であり、制御系のブロック線図を図1に示す.


図1. LQ 制御系のブロック線図

高次導関数からのフィードバックゲインを省略し、PID制御系との比較を行う。

3.現在までの研究成果
LQ制御,LQI制御を理解した上で,実際に適当なプラントのモデルで状態フィードバックゲインを設定した。また、同様のモデルでPID制御系を組み,制御系の特性をみるため応答の比較を行った。

4.今後の課題
 適当なプラントのモデルとして1次遅れ+むだ時間系を上げ,LQI制御系においてフィードバックゲイン F を定める。求められた F について高次導関数を考慮したとき,省いたときの制御性能の比較を行う。LQI制御系のフィードバックゲインを省略した場合と、古典的なPID制御を施した場合のゲインを比較して制御系の特性を確認する。

今年の卒研内容




1996 BY 笠原研