電気電子創造工学科 久保研究室

Kubo_Q1

クイズです(以前は,1年次入学生の導入科目で教えていました。15週のうちのホンの1時間程度):一般の人でも,高専生でさえも,正解がわからない人が多い,びっくりのクイズです。

Q. 高専って,高校なんでしょ?
A. Profoundly mistaken !(思いっきり,間違ってますよ!)

工業高専と,工業高校の違いを答えられない人が多い。オープンキャンパスで,間違った思い込みをしたお父さん方を,説得するのは,結構大変なんです。高専高校は違います。
学校教育法では,
  • 就学前教育 :幼稚園に通う人を「幼児」
  • 初等教育  :小学校に通う人を「児童」
  • 中等教育  :中学・高校に通う人を「生徒」
と呼びます。これらの学校は文科省の初等中等教育局が所管します。 これに対して
  • 高等教育  :大学,高専,短期大学,大学院に通う人を「学生」
と呼びます。これらの学校は文科省の高等教育局が所管します。 つまり,
  • 工業高校 は 中等教育機関で,中学の仲間です。
  • 工業高専 は 高等教育機関で,大学の仲間です。

Q. 高等専門学校って,専門学校なんでしょ?
A. Profoundly mistaken !(思いっきり,間違ってますよ!)

高専専門学校ではありません専門学校は(学校教育法の)学校ではありません。学校教育法で「学校」の範囲を,第一条で次のように言っています。 「この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。」
つまり,高等専門学校は「一条校」です。(学校教育法で定義された)学校です。
学校教育法で「学校」に上げられていない学校には,次のようなものがあるでしょう。 例えば,保育所,専修学校,大学校,大学進学予備校,自動車学校,国交のない国の管理する学校,など。 このうち,専門課程を置く専修学校を「専門学校」と称することができる,となっています。
つまり,専門学校は一条校ではなく「専修学校」です。(学校教育法で定義された)学校ではありません
なお,一条校が社会的に低いなどということではありません。法律の縛りが異なるので, 自由な教育カリキュラムを組めるメリットがあるなど,特に専門職能学校の場合,教育の自由度が 高いと言えます。例えば医療系の専修学校などは,国家試験の合格や,就労時のスキルで評価されるため,実習実技に充実して座学の専門性が高いことが少なくない。また理容,ファッション,パティシエなど,アーティスト性の高いスキルが要求される分野で,法律に縛られない教育が望ましい成果を生みます。多くの専修学校と大学校(文科省管轄ではない防衛大学校とか,気象大学校など) を卒業すると,取得単位によって大学院入学資格が得られるなど,実質的に遜色があるわけではないです。
つまり
  • 高等専門学校 は 一条校,(学校教育法で定義された)学校です。専門学校ではありません。
  • 専門学校 は 一条校ではありません。(学校教育法で定義された)学校ではありません
資格取得なら専修学校(専門学校)が多くの場合有利でしょう。
一方, 高等専門学校は卒業して「準学士」の称号が与えられ,大学編入学(または専攻科進学)で「学士」の学位が得られます。高専は,学問を習得する「準学士」,「学士」,「修士」,「博士」のライン上の教育をします。 つまり,学問を教えるということです。高専は,専門学校とは目的が違う学校です。

Q. 高専の生徒さんは優秀だから!
A. Profoundly mistaken !(思いっきり,間違ってますよ!)優秀だけどね!

このような誤解をしている人が多い。小山高専50周年式典で,栃木県知事もスピーチでこのミスをしておられました。 オープンキャンパスで,間違った思い込みをしたお父さん方を,説得するのは,やっぱり結構大変なんです。 福田知事は,宇都宮工業高校のご出身ですから,優秀な方ではありますが。
高専生は 学生 であって, 生徒 ではありません
ちなみに専門学校(専修学校)生は 生徒 だそうです。なお,高専生は優秀です,優秀なはずです。

Q. 高専生のきみたちは生徒ではなく学生だから,さぼる自由があるが,その責任も自分でとるんだ!
A. Profoundly mistaken !(思いっきり,間違ってますよ!)言いたいことはわかるけどね!

このような誤解をおっしゃる校長先生が多かった。これを真に受けて,さぼって留年の責任をとることになる,よくない。 始業式で,間違った思い込みをした本校関係者を,説得するのは,やっぱり結構大変なんです。
大学生や高専生は学生です。これは法律に基づいた呼び方で,高等教育を受けているだけのことです。 さぼる自由はあるし,それは高校生と同じことです。教員は,さぼる学生を,ちゃんと指導すべきです。
中学生や高校生は生徒です。法律に基づいた呼び方で,中等教育を受けているだけのことです。 中学生は義務教育だから,理由なく学校に通わせないと,親権者を持つ大人が犯罪者になる。しかし,中学生にも高校生にもさぼる自由はある。大人がちゃんと指導しているし,さぼると自分がつらくなるだけの話です。
高専生が学生だからさぼる自由があるが,責任も自分でとれよ,っていうエンカレッジする気持ちはわかるんですけどね。教員は,さぼる高専生を指導しなければいけない。それが正しいところです。高専は学問を教える場所です。20年前の学生は指導しなくても自由を間違った方向には行使しませんでした。学生は,教員に学問をもっと要求してよいのですよ。「先生,本当にそうですか?」って,本質的な質問をしてくださいね。

Q. 高専が自分に合ってないから3年で辞めて高卒の資格で大学受けなおします!
A. Profoundly mistaken !(思いっきり,間違ってますよ!)できたらやめないで卒業して!

工業高専は5年過程なので,5年修了して(卒業認定受ければ)はじめて「高専卒」となります。(さらに専攻科で2年修了して(学位審査に通れば)「工学士」の学位が得られます。しかし大学を卒業していないので,専攻科修了者はやはり「高専卒」です。しかし学士の学位があるので,「大学卒相当」と認められます。履歴書の最終学歴に「高専専攻科修了」と書くのが普通ですね。当然のことながら就職待遇は大卒同等で,大学院へも(入試に受かれば)進学できます。)
工業高専を3年で辞めると,3年次修了退学になります。高卒ではないので,最終学歴は「中卒」です。堂々と「中卒」と書くか,「高専3年次修了」と書くのが普通でしょうね。それなら間違っていません。
高専を3年次修了退学して,大学1年に入学するためには,高認検定をクリアして「高卒相当」を取得して 更に大学入学の猛勉強をして,大学入試合格をして初めて大学生になります。大学卒業するまでは やはり最終学歴は「中卒」です。やっぱりつらい生き方なんです。それを克服した人は称賛できます。しかし,大変な労力ですよ。
5年修了して卒業する方が楽なのに。大学編入して大卒になる方が楽なのに。いやいや,楽な道などありません。 よく考えてね。
これを書いている久保は,これまで2度「退学」をしています。退学願を事務に提出するときの 親に対するうしろめたさ。それに続くいばらの道のつらいこと。経験しているので,わかります。 辞めなくて済むなら,やめないでね。辞めるなら,積極的に前向きに,覚悟のうえで…。

これら1年生に教えていた「システム演習Ⅰ」(D科)および「エンジニアリングイントロダクション」(EE科) の授業は,主事に理解できなかったようで,強烈な圧力で科目を消されてしまいました。なので,皆さん,このクイズに答えられなかったのでは?

この科目「エンジニアリングイントロダクション」では,5年間を半期で見渡す内容を楽しく学ばせていました。電気回路,電気部品,磁気と電荷, LEDとトランジスタ,ハードウェアとソフトウェア,C言語,コンピュータ,情報とシステム,技術者とは, PL法と技術者倫理,レポートの書き方指導,プレゼンテーション指導,チームワーク,とにかく 色々なことをやっている中で,工学の下地を作ってしまう。この科目がなくなって,大丈夫かな? 広さと地固めをしてから電気回路を教えないと,3年生になってもお勉強として学ぶ電磁気学などが,習い事化してしまう懸念があります。気が気ではありません。

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