建築と美術の融合

 

モダニズムが過渡期を迎えていた1920年代においては、新しい表現を求める実験的精神にあふれており、そのような流れの中で建築と美術が融合しようとする潮流が生まれた。それは、ピエト・モンドリアンらによって掲げられた“デ・ステイル”という芸術運動の中で生まれた「シュレーダー邸」という住宅建築。この建物を設計したのは、それまで家具職人をしていた

ヘリット・トーマス・リートフェルト

この邸宅では数色の壁材と原色の線材が水平・垂直に構成され、建築の抽象化・単純化が徹底的に追及されている。リート・フェルトのこのような抽象主義的なデザインは、 原色と四角形によるコンポジションを表現手法とするデ・ステイル特有のものであり、美術運動が建築に反映した好例として、このシュレーダー邸は有名。

 

またこの建物は外部のみならず、内部においてもデ・ステイルの様式が実践されている。たとえば、有名な

「レッド・アンド・ブルーチェア」に代表されるように、家具やインテリアなどすべての内装に至るまで抽象表現が貫徹されており、その空間は現代においても新鮮さを失っていない。しかし、この建物はただ単に完璧な抽象主義のみを目指したわけではなかった。幾何学的な窓の配置にも大きなしかけが施されていたり、あるいは空間を自由に区画することのできる可動式の間仕切りが備えられており、まさしくそれは機能の上における抽象表現といえる。