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平成 16年 第4回 機械工学科 井田晋

「晋と進と晋作」
 
 新年度、最初の授業で私は「井田 晋」と板書し自己紹介する。「晋」という字はほとんどの学生は読めない。猿は人間より3本毛が少ないが、この字は普通の「普」より2本少ないので、私は普通の人間と猿の間に存在する。この字の意味は「上へ、前へ進める」とか「進みのぼる」である。そこで「進」と同じく「しん」「すすむ」と読む。そして、大昔、中国に西晋、東晋という時代、国があったことを紹介し、次に、この字を使った有名人、幕末の長州人、吉田松陰の弟子「高杉晋作」を知っているかと問う。ほとんど知らない。それで、彼のことを少し話し、彼の辞世の句「おもしろきこともなき世をおもしろく」について述べる。彼は下の句をつくれなかった。司馬遼太郎の「世に棲む日日」には、歌人の野村望東尼が晋作の寿命が尽きようとしてるのを見て「すみなすものは心なりけり」と下の句をつけたとある。遼太郎はこれにはあんまり満足してない。ここからは学生達への自己紹介とは関係ないが、私は昔、27歳で病死した彼を思い、そして前述の司馬の本の題名を思い、下の句に「よにすむひびは長短あらず」とつけた。
 
 さて「おもしろくよにすむ」ことは難しいことだ。単なる遊びばかりして限りある命のはて迄生きることはできないし、単なる遊びばかりでは、本当に面白いとは言えない。人間は社会的な生き物だ。自己満足でなく、社会的に面白く生きるのはそれなりの努力と対応が必要になる。
 
 2月12日は司馬遼太郎の命日で、彼にちなんで「菜の花忌」がいとなまれる。
 
 司馬は膨大な数の、主に歴史小説を書いた。
 
 「竜馬はゆく」で、晋作のことを「天才的な革命家」と称している。
 
 ここらへんで、才にも恵まれない「晋」と天才「晋作」のお話を閉じることにしよう。ちなみに小山高専の図書情報センターには80冊以上の司馬の本がある。一冊どうぞ。

(機械工学科  井田 晋)
「高専だより No.133 掲載」