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中級者向け ユニバーサル基板はんだ付け講座 - 第2回「回路の制作」
投稿者:2G 加藤
前回設計した部品配置図をもとに、ユニバーサル基板上に回路を制作しましょう。
はんだ付けの基本的なやり方や必要となる道具は、初心者向け講座で解説していますので、まだ読んでいない方は確認しておいてください。
配線方法
回路の制作をしつつ、ユニバーサル基板上に配線をしていく方法を紹介していきます。
直線の配線
まずは部品配置図の通りに、抵抗 R1とLED D1をはんだ付けします。
なお、今回はユニバーサル基板の"B"の列が回路の中央になるようにしました。
取り付ける穴位置や部品の方向を間違わないように気を付けながら、はんだ付けします。
さて、このR1とD1を接続する配線をはんだ付けしましょう。
配線にはスズメッキ線や、切断した部品のリード線を使います。
ちょうど、抵抗やLEDをはんだ付けした時に切断したリード線が余っているはずなので、これを使いましょう。
リード線を当ててみます。
まずは片側のみはんだ付けして、位置を決める方法がやり易いです。
すでにランドに盛られているはんだを再び溶かして、リード線をはんだ付けします。
ほんの少しだけ新しい糸はんだを追加すると、フラックスの作用できれいに仕上がることがあります。
片側が固定されたら、余分なリード線をちょうどいい長さで切ります。
その後にもう片側をはんだ付けし、固定すれば配線完了です。
リード線が短かすぎる場合、はんだ付けをしている最中に動いたり、はんだごてに表面張力でくっついて来て、位置がずれてしまうこともあります。
そんな時はピンセットやラジオペンチなどで挟み、はんだが固まるまでの間、位置を固定しておきます。
曲げを含む配線
次は曲げを含む配線をしてみましょう
R2からC1へ繋ぐ配線は、90度曲がっている箇所があります。ここを制作してみましょう。
まずはR2とC1を基板へはんだ付けします。この時にC1から付けて、次にR2の順番にしてみましょう。
R2のリード線を、はんだ面に出たところで曲げて基板に沿わせると、そのまま配線として利用できます。
そして部品配置図の通りに、90度曲げる箇所でリード線を曲げます。
曲げるときはラジオペンチなどを使って、きれいに曲げましょう。
配線の余分な長さを切断したら、はんだ付けをして完成です。
ここまで解説した直線や曲げの方法さえできれば、基本的な配線作業はどんどん進められます。
回路の右半分、R3, R4, D2, C2も同じように制作してみましょう。
なお慣れてきたら、一箇所につき1回ではんだ付けできるように順番を考えて行うと、作業時間が短縮できます。
先ほどは部品の固定と配線の固定で2回にはんだ付けした例を、次の写真の例では1回ではんだ付けできます。
それぞれの部品は、もう片方のリード線がすでに固定されているため、動きません。
分岐を含む配線
続きを配線していきます。
トランジスタ Q1をはんだ付けしましょう。
Q1の真ん中の端子であるC(コレクタ)からは、D1とC1に分岐しています。
この分岐部分をどのようにして配線すればよいか解説します。
まずは、C(コレクタ)から直線的に配線できるD1へと配線してしまいましょう。
上の写真でピンセットが指し示す部分に合うように、分岐する配線を作ります。
短めのリード線を90度に曲げて、長さを調節します。
なぜ90度曲げた配線を作るのかという理由は、分岐前の線(今回の例は縦線)に沿わせる部分を少し長めにとるためです。
90度曲げた構造じゃない、短い線を横に出すだけの分岐配線だと、はんだ付けの時に位置決めが難しいのと、はんだ付け後も少しの衝撃で剥がれてしまうリスクが増します。
Q1の分岐配線ができたら、反対側Q2も同様に配線します。
ここまで完了すると、全ての部品のはんだ付けが完了し、次の写真のようになるでしょう。
交差する部分の配線
部品配置図を設計したときに、配線が重なってしまう部分を、一度部品面側に通して配線するようにした所があります。
具体的には、Q2のB(ベース)からR2やC1へと繋ぐ配線です。
ここのジャンパ線を制作しましょう。
ジャンパ線は、リード線をコの字型に曲げて制作します。
通す穴の間隔と、コの字型に曲げる長さを調節して制作しましょう。
上手く長さを調節して、できるだけ基板の表面から浮かないように配線するのがポイントです。
ジャンパ線が周囲のパーツより浮いていたりすると、使用時に思わぬところとショートして危険なこともあります。
また今回の回路ではあまり気にしなくていいことですが、高周波を扱う回路では電磁ノイズを放出したり、逆に空間のノイズを拾ったりもして、いいことはありません。
Q2からR2, C1間をジャンパ線で配線できたので、対となるQ1からR3, C2間は通常通りの方法で配線します。
まずはQ1のB(ベース)からリード線を横へ出し、45度曲げ、さらに先を45度曲げて分岐点に沿わせます。
この配線は長いので、端と端の固定だけでは強度が不足している可能性があります。
最初に45度曲げた点あたりで、一度ランドとはんだ付けをしておくことで、剥がれに対して強くなります。
電源供給部分の配線
残る部分は電源供給部分です。
基板上部に電源のプラス側端子、基板下部にマイナス側端子を分配する配線をはんだ付けします。
電源プラス側は、長めのリード線1本でギリギリ配線できる長さでした。
対してマイナス側は、幅も長い上に直角で曲げる部分も必要なため、1本では届かない長さになります。
こういう時、スズメッキ線を使ってもいいのですが、今回左右から1本ずつ伸ばしたリード線が電源マイナス端子の接続部分で合流することにより全体が繋がるようにしました。
ケチ臭いかもしれませんが、できるだけ端材を有効活用することはエコです。
電源は、今回は単三アルカリ電池×2個のボックスと、電池スナップを使用します。
単三アルカリ電池2個直列は、公称3Vの電圧になります。
回路図にはスイッチもありますが、今回は電池スナップを電池ボックスに付けるとON、外すとOFFということで代用します。
もちろんスイッチを別に用意したり、スイッチ付き電池ボックスを使用するのも良いでしょう。
赤いほうがプラス側、黒いほうがマイナス側になります。
はんだ付けが完了したら、回路が完成です。
動作確認
完成した基板に通電する前に、もう一度部品配置図通り配線できているか、はんだ付けが正しいかを目で確認しましょう。
ショートや極性間違いなどがあると、火傷したり部品を壊したりするため、早く動かしたい気持ちを我慢して今一度確認することが大切です。
今回の回路は、約0.5秒間隔で、赤LEDと緑LEDが点滅します。
こうして、全て自分の手で配線すると、動いた時の達成感も大きいですね!
なお、この回路でR2とR3の抵抗値を変更すると、LEDの点滅間隔が変わります。倍や半分の値に付け替えて変化を観察するのも楽しいですね。
もし回路の動作がおかしい場合は、すぐに電源を切り、もう一度回路の配線や部品の値、はんだ付けの形を確認しましょう。
まとめ
この講座では、回路図から部品配置を自分で設計し、ユニバーサル基板で制作する一連の方法を解説しました。
これができるようになると、ただ作る電子工作から、自分で考え設計して作る電子工作の世界へと足を踏み出せます。
この一歩はとても大きな一歩です。ぜひチャレンジしてみてください。
追加情報
前回設計した部品配置図は「できるだけ元の回路図に近いの配置にする」というものでした。
つまりこの条件が違えば、別の部品配置になり、そのパターンは無限に存在するわけです。
もし、できるだけ小さい基板で非安定マルチバイブレータを作るとしたら、どんな配置図になるでしょうか?
ここで新たなテクニックを紹介します。
抵抗は、立ててはんだ付けすることもできます。
この方法ならば、使用する穴数は2×1で済み、さらなる基板の小型化が狙えます。
ただし、高さは増えてしまうのと、部品の変形しやすさ・外れやすさは悪化してしまうので、注意が必要です。
この方法を使い、できるだけ基板の面積が小さくなるように設計した部品配置図と、完成基板が以下の通りです。
完成基板では、LEDを基板の外側に向けて曲げて付けています。
基板の余分な部分を切り落としておいたり、Fタイプなどの元から小さい基板で制作したりすると、模型やロボットなどに組み込んだりして点滅するギミックに使えそうですね。
ここまで基板を小さくしてしまうと、はんだ付けにも高い技術が必要になります。
ただ、使う時の条件を設定して部品配置を考えるのはパズルのような要素もあり、良いものが出来たときはとても達成感があります。
ここから先の可能性は無限大ですので、色々な回路や配置にチャレンジしていってください。
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