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中級者向け ユニバーサル基板はんだ付け講座 - 第1回「部品配置の設計」

投稿者:2G 加藤


初心者向けはんだ付け講座では、市販しはんキットの制作を通して基本的なはんだ付けの方法を解説しました。


でも、はんだ付けに慣れてくるとキットを作るだけでは物足りなくなり、自分で考えた回路を制作してみたくなりませんか?


またインターネット上のいろいろな所で公開されているオーディオやモータードライバなどの回路図は、制作者の工夫がまった素晴らしい回路が沢山たくさんあったりします。


この講座では、回路図が完成しているまたは公開されている状態から、どのようにしたら基板を制作できるのかを解説します。



制作する回路


今回の講座では「非安定マルチバイブレータ」という回路の基板を制作してみましょう。


この回路はとても有名な回路で、電子回路の教科書でもよく紹介しょうかいされていたりします。


完成した回路は2つのトランジスタの相互そうご作用で、一定時間でON/OFFをり返します。


今回はトランジスタのON/OFF時に、赤と緑のLEDが交互に点滅てんめつするようになっています。



回路のくわしい動作原理や設計方法などは、ここでは割愛かつあいします。


下記の回路図では、抵抗ていこうやコンデンサの定数や、使用するトランジスタの種類まで設計された状態になっています。


非安定マルチバイブレータ
非安定マルチバイブレータ



使用する部品のサイズ確認


回路図が出来上がったら、使用する部品のサイズを確認します。


サイズは部品のデータシートにも情報がありますが、部品が手元にあれば実際に手に取り、差しんでみたりして確認するのが一番確実です。


今回使用する基板は「ユニバーサル基板」と呼ばれ、縦横決まった間隔かんかくで穴が開いているものを使用します。


今回使用するのは2.54mmピッチ(間隔)の、ぞくにCタイプと呼ばれる小さめの基板です。


はんだ面は丸い銅箔どうはくがあるだけで、どの部品とどの部品をつなぐかは自分で考えて作業しなければなりません。


ユニバーサル基板 部品面
ユニバーサル基板 部品面
ユニバーサル基板 はんだ面
ユニバーサル基板 はんだ面


はじめに抵抗の大きさを確認してみましょう。


抵抗をフォーミングします。この時、リード線の根元の部分からきっちり曲げて、リード線の間隔ができるだけ短くなるようにしてみます。


抵抗(電気抵抗)
抵抗(電気抵抗)
フォーミングして基板に挿入
フォーミングして基板に挿入


差し込んだ抵抗が、ユニバーサル基板の穴いくつ分なのかを確認します。


下記の写真の場合は、横は穴4つ分、縦は穴1つ分であることがわかります。


つまり、部品配置を設計する際に、抵抗の大きさは4×1という具合に考えます。


抵抗の大きさ
抵抗の大きさ


ほかの部品も確認していきましょう。


電解コンデンサは、横は穴2つ分、縦は穴一つ分ですが、円筒えんとう形の本体部分が直径5mm程度あります。


LEDは、横は穴2つ分、縦は穴一つ分です。本体部分の直径は3mm程度です。


トランジスタは、横は穴3つ分、縦は穴1つ分です。本体部分は、横には穴のはばより小さいですが、縦には穴より大きく4mm程度あります。


このように、使用する穴の数とは別に、部品自体の大きさによって干渉かんしょうしないようにはなして配置しなければならないこともあります。


真上(または真下)から見た部品の大きさは、フットプリント(footprint = 足跡あしあと)と呼ばれ、配置図を設計するときに非常に重要な要素になります。


電解コンデンサ
電解コンデンサ
LED
LED
トランジスタ
トランジスタ


部品のフットプリント一覧


上記をまとめると、今回使用する部品とそのフットプリントは、次表のとおりになります。



使用する部品とフットプリント一覧
名称・値 穴数・フットプリント 個数
抵抗 100Ω 4×1 2本
抵抗 10kΩ 4×1 2本
電解コンデンサ 100μF 2×1 直径5mm 2個
LED 赤 2×1 直径3mm 1個
LED 緑 2×1 直径3mm 1個
トランジスタ 2SC1815 3×1 厚み4mm 2個



部品配置図の設計


部品のサイズ確認が終わったら、いよいよ配置を設計していきましょう。


設計には色々な方法がありますが、最近ではソフトウェアを使ってPC上で設計するのが主流です。


ソフトの使い方まで解説するととても長くなってしまうため、今回はあえて昔ながらの、手書きによる方法で基本を学んでいただければと思います。



手書きで設計する際には、方眼紙を用意すると便利です。


ユニバーサル基板は縦横決まった間隔で穴が開いているため、方眼紙のマス目の交わる点を穴に見立てて図を書くとやり易くなります。


写真のような正式なグラフ用方眼紙でなくても、例えば正方形のマスのあるメモ帳やノートでも十分です。


方眼紙
方眼紙


部品配置を設計する時には、制約条件があるかをまず考えます。


例えば、基板の大きさはこれ以下にしないといけない、部品の高さはこれ以下にしないといけない、LEDを外側に向けたいので基板の外周近くに配置するなど、完成した回路を使う時のことを考えて設計します。


今回は制約条件として「できるだけ元の回路図に近い配置と配線にする」を考慮こうりょして設計してみたいと思います。



まずは部品の基本的な配置方法です。


回路図左上にある抵抗R1を配置します。サイズは4×1なので、部品を通す小さな穴をマス目の交点に書き、抵抗の回路記号と、部品の大まかなフットプリント、そして回路図番号を書きます。


抵抗R1を配置
抵抗R1を配置


この調子でどんどん配置していきましょう。とはいえまずは左半分からいきます。


元の回路図通りの配置を意識して、R2, D1, C1を配置してみます。D1, C1には極性(方向)があるので、間違まちがわないように記入します。


大切なのは、フットプリントが重ならないようにすることと、部品を通す穴も重ならないようにすることです。


R2, D1, C2を配置
R2, D1, C2を配置


次はトランジスタQ1を配置します。


トランジスタQ1は端子たんしが3つあり、どの向きで配置するか少し悩みます。


今回の回路はB(ベース)から出た配線が中央でクロスして、反対側までびる構造になっているため、B(ベース)を内側に向けたほうが配線が短くなるため効率がよさそうです。


ということで、配置は左からE(エミッタ), C(コレクタ), B(ベース)の順番になるように配置します。


トランジスタQ1を配置
トランジスタQ1を配置


このトランジスタQ1のベースにつながる抵抗R3は、先に配置しておきましょう。


抵抗R3を配置
抵抗R3を配置


ここまで配置したら、部品を通しす穴と穴とをつなぐ配線を記入してみましょう。


コツとして、配線を曲げるときは必ず穴のある位置(マス目の交点)で曲げ、角度は90度または45度にすると、はんだ付けがやり易くなります。


部品の配置がうまくいっていれば、無理なく部品間の配線を書けるはずです。うまくいかなければ配置をやり直します。


部品間の配線を記入(左半分)
部品間の配線を記入(左半分)


左半分が完成しました、次は右半分を配置していきます。


今回の回路は左右が線対称たいしょうになっているため、ここまでくればあとは簡単です。R4, D2, C2, Q2と一気に配置します。


C2やQ2は、配線しやすさを考えて左側とは逆向きに配置します。


R4, D2, C2, Q2を配置
R4, D2, C2, Q2を配置


そして右半分の部品間配線も記入しましょう。


部品間の配線を記入(右半分)
部品間の配線を記入(右半分)


するとここで少し問題が発生します。


Q2のB(ベース)とC1やR2とをつなぐ配線は、すでにななめの線が入っていて、ショートしてしまうため通せません。


どうすれいいのでしょうか?


このままではショートしてしまう
このままではショートしてしまう


この問題の解決法は、ビニル被覆ひふくの付いた線で配線するか、基板の部品面(表側)を通すかの2種類です。


今回は部品面を通す方法で配線してみましょう。


部品面を通す線はジャンパ線と呼ばれ、配線図では「JP」などと記述します。


また、表を通すことを強調するために、直線ではなく少しカーブした線で書くとわかりやすくなります。


ジャンパ線で重なる部分を解消
ジャンパ線で重なる部分を解消


最後に、残りの部分の配線を記入し、電源のプラス側、マイナス側の接続位置を記入すれば、部品配置図は完成です。


基板の大きさに制約がある場合は、ここから配置を寄せたりしてさらなる小型化を図りますが、あまり小さくするとはんだ付けが難しくなるのでバランスが大切です。


なお配線図を書く際は、消してやり直しが頻繁ひんぱんに発生するため、ボールペンではなく鉛筆えんぴつと消しゴムで行うのがよいです。


回路図(再掲)
回路図(再掲)
完成した部品配置図
完成した部品配置図


次回は、この配線図に沿って、ユニバーサル基板に回路を作成する手順を解説します。






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