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初心者向け はんだ付け講座 - 第2回「はんだ付けの方法」
投稿者:2G 加藤
前回は、はんだ付けの理論と必要な道具を解説しました。
今回は、具体的なはんだ付けの一連の作業を解説します。
正しいはんだ付けの方法と、正しくはんだ付けできたかどうかの形について詳しく見ていきましょう。
事前の準備
はんだ付け始める前に、作業環境を整えましょう。
まず大切なのは、作業を行う机やその周りを片付けることです。
はんだごては高温になるため、一瞬でも触ると火傷しますし、ビニールやプラスチックに触れると溶けてしまいます。
散らかった作業環境だと、思わずこて台が倒れたり、コードを引っかけて台から抜けたりして、事故につながるかもしれません。
同じ理由で、はんだごてのコードの束ね癖を伸ばしたり、延長タップ等で使いやすい位置までコンセントを持ってくるのも大事になります。
また、作業する机にはマットや板を敷きましょう。
はんだ付け作業では、はんだやフラックスが跳ねて机が汚れたり、加熱したこて先や部品で机を焦がしてしまったりします。
焦げてしまってもいいマットや、薄いベニヤ板などを敷いて、その上で作業するようにしましょう。
こて先クリーニング用のスポンジは、しばらく使わないと水が蒸発してカチカチになってしまいます。
この状態ではきれいにクリーニングできないので、水を含ませて柔らかくしましょう。
ただし、ビチャビチャにするのは良くありません。持ち上げても水が滴らないくらいがちょうどいい水分量になります。
はんだ作業に慣れないうちは、保護メガネ(安全メガネ)をかけて作業するようにしましょう。
糸はんだを急激に加熱してしまうと、はんだやフラックスが飛び散ってしまうことがあるため、これらから目を守ります。
ここまで準備ができたら、いよいよはんだごての電源プラグをコンセントに挿し込み、加熱しましょう。
適切な温度(約350℃)まで加熱するのに時間がかかる場合があるため、少し早めに加熱しておきます。
はんだ付けの基本手順
はんだ付けの基本手順として、基板に部品を挿し込み、はんだ付けをする方法を確認していきましょう。
「ユニバーサル基板」と呼ばれる、縦横同じ間隔でたくさんの穴が開いた基板を使います。
ユニバーサル基板は、試作品を作ったり、ちょっとした実験回路を作る時などに使われる基板です。
今回使用するのは2.54mmピッチ(間隔)の、俗にCタイプと呼ばれる小さめの基板です。
部品のフォーミング(整形)と挿入
まずは「抵抗(電気抵抗)」を付けてみましょう。
中学校で習うオームの法則では、Rで表され、単位はΩ(オーム)ですね。部品はこんな見た目をしています。
抵抗から左右に生えている線を「リード線」といいます。
このリード線を2.54mmピッチの穴に合うように折り曲げます。これを「部品のフォーミング(整形)」といいます。
フォーミングの際はラジオペンチなどを使って、直角に、きれいに折り曲げましょう。
きれいにフォーミング出来たら、基板の部品面から挿し込んでいきます。
もし基板のピッチに合わないようなら、電子部品はデリケートなので無理に押し込んではいけません。フォーミングし直してくだい。
抵抗のような部品ならば、基板に本体がぴったり付くまで挿し込みます。
はんだ付けの4ステップ
部品が挿し込めたら基板を裏返して、はんだ面にはんだ付けして固定します。
この時に「4つのステップ」を意識して作業しましょう。
ステップ1 はんだごてを当てる(加熱)
はんだ面の「ランド」と呼ばれるドーナツ状の銅箔と、部品のリード線を同時に加熱できる位置に、はんだごてを当てるのがポイントです。
理論のところで説明した「濡れ」ですが、冷たい部分には濡れ広がってくれません。ですから、ランドと部品がどちらも十分に加熱されている必要があるのです。
加熱する時間は、部品の大きさや、ランドの大きさにより調整します。金属部分が大きい部品やランドは、長く加熱しないと十分に温まってくれません。
この抵抗とランドの例ならば、1~2秒くらい加熱します。
ステップ2 はんだを供給する
部品とランドが十分に温まったら、糸はんだを当てて、溶かして供給していきます。
はんだを供給する量は、多すぎず少なすぎず適量があるので、少しづつ調整しながら溶かしていきます。
ステップ3 はんだを離す
はんだを適量供給出来たら、糸はんだを先に離します。
まだ、はんだごては離してはいけません。
ステップ4 はんだごてを離す
糸はんだを離してから、1秒ほど遅らさせてからはんだごてを離します。
これは理論のところで説明した、「拡散・溶出」のプロセスを確実に行うためです。
ここで1秒待つかどうかで、合金層がしっかり出来るかどうかが決まるといっても過言ではありません。
はんだごてを離した後の数秒間も、はんだが冷えて合金層が出来上がっている最中ですから、基板や部品を動かさないようにしましょう。
はんだ付けの手順 動画
4ステップの流れを動画で見て、タイミングを確認してください。
各ステップのタイミングは、実際は何回も練習して少しずつ体で覚えていく事になります。
リード線の切断
はんだ付けが完了したら、余分なリード線をニッパーなどで切断します。
切断位置は、はんだ付けをしたすぐ上を切ってしまって大丈夫です。無駄に長いとショートの原因になるので、短めに切ります。
良いはんだ/悪いはんだ
はんだ付けが上手くできたかどうかは、実際には電流を流したりしないと分かりませんが、作業中は大まかに見た目で判断します。
最も良いはんだの形は「富士山型」といわれ、ランドと部品との間の部分(フィレットと呼ばれる)が富士山のように裾野が広くなっているのが理想形です。
悪いはんだの例です。はんだを供給しすぎて、フィレットがイモのように丸くなってしまっています。「イモはんだ」といわれます。
良いはんだ、悪いはんだの形としては、以下のようなものがあります。
「イモはんだ」はランドの加熱不足の時によく起こります。リード線には付いていますが、ランドにフィレットが広がっていません。
逆にリード線の加熱不足は「テンプラはんだ」と呼ばれ、一見外からは富士山型にように見えてしまいますが、リード線にはフィレットが広がっていません。
これら二つどちらも、基板のランドと部品との接合が甘く、電流が途切れ途切れになってしまうなどの不都合が発生します。
「ブリッジ」は、はんだを盛りすぎて、隣のランドや部品とショートしてしまっている状態です。意図しない経路で電流が流れて大変危険です。
悪いはんだになってしまう主な原因は以下の通りです。
- 加熱しすぎ
- 加熱不足
- はんだの供給しすぎ
- はんだの供給不足
- 4ステップの順番を守っていない
- フラックスの不足
- ランドや部品の金属部分が汚れている
はんだ付けの修正
修正したい場合や、部品を取り外したいときは、「はんだ吸い取り線」や「はんだ吸い取り器」を使って一旦除去します。
修正箇所と吸い取り線を加熱すると、吸い取り線の編線に「毛細管現象」が働き、溶けたはんだが編線に移動します。
こて先のクリーニング
はんだ付けを行っていると、こて先が曇ってきたり、ひどい場合はこて先にはんだが溜まってきたりします。
この時のこて先は、フラックスが完全に蒸発したはんだが乗っている状態で、新しく供給されるはんだの濡れ広がりを邪魔してしまいます。
初めて使うときや数回に一度定期的に、または汚れが目立つようになったら、スポンジを使ってクリーニングしましょう。
クリーニングするときは、スポンジの中央ではなく縁の部分を使うと上手くいきます。縁に引っかけて丸まったはんだが下に落ちるようになります。
こて先を回しながら何回かクリーニングするときれいになります。
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