電気電子創造工学科 久保研究室

Seminar_doc2019

指導方針(久保研究室)-同僚にも誤解されていますので,ご一読ください。 

〇これまで30年,卒業研究を指導してきました。来てくれた全員が卒業しています。卒業した者は,全員が研究を達成しています。専攻科生は,初年度から受け入れていますが,修了希望者はみな素晴らしい業績を残して修了しています。特に学位(学士)申請で不合格になった者は一人もいません。
〇何かと不満を言われる(ような?)久保研究室ですが,教員の指導方針は明確です。教員は学生を成長させる責務があり,成長させるためには対機説法にならざるを得ません。プロとして学生と接しているので,お互いの人間関係を作るなどの目的で一緒に会食はしません。招かれれば行くかもしれませんが,一部の人との濃厚な付き合いは,不公平です。(大学教授が大学院生を食事に招くのは,その手当が出ているからです。高専教授には,その手当は出ていません。)人間関係は信頼関係という意味では卒研生と教員の良好な関係は必要で,教員と学生は対等です。人間関係の仲良し度よりも,学生の成長を優先します。成長したうえでの卒業を最優先で目指します。その人に応じた対応をするため,学生から見ると不公平に思うかもしれない。わかりやすく言うと,70点の人が60点をとってもほめないが,10点の人が59点をとれば赤点でも褒めます。59点の人は卒研室では合格でよい,しかし60点の人は,もっと伸びるでしょ,課題を追加します。点数で合否はつけられません。
テーマは教員が決めます。その人の希望を聞いたうえで,学生の特質も考慮します。教員の職責の1つが,テーマの決定だということです。教員は提案をしません。提案をするのは学生で,その可否を判断するのが教員の仕事です。これは,教員と学生に上下関係があるのではなく,役割の違いがあるためです。教員の決定に不満なら,直接言ってきたもののみ認めます。その態度が尊いからです。よその卒研室に移りたい場合は,直接指導教員に言ってください。行き先の先生と話をつけて,移動させるのも指導教員の仕事です。よその研究室からこちらに移動したい場合も,直接言ってください。それが正常な人間関係だと思っています。これまで後期初めに他の研究室に移動した者も,逆に他の研究室から受け入れた者も実績があります。最近は指導教員に言わず,第3者教員に言いつける者もあって,つまらない遠回りをするだけです。
テーマの決定時期は,一通りこちらからの課題などをこなす様子を確認できてからになります。早ければ4月,標準は6月,就職などで卒研に来る時間が少なかった場合はその分遅くなります。卒研の成果は12月末までに完了してもらいます。完了できない場合は留年してください。その代り,完了できなかった理由を勘案してこちらからオプションを提示することがあります。具体的にはどのタイミングまでには成果を出すかを約束するなどです。合格を出せないケースは,成果として何も作らない,回路もプログラムも作らない,実験結果の整理が終わらない,実験をしていない,他者にやらせて自分は何もしていない,などです。たまにあるケースは,工陵祭などの運営に専念して功労賞をもらう水準だから卒業を認めよなどの言い分ですが,それは違います。他の業績は素晴らしいが,卒研の合否は卒研の活動によって決まります。他の業績を上げている時間の分だけ卒研は進まないはずです。その人が大学進学をする場合は,なおさら厳格に卒研の合否を決めることになります。卒研合格には必ず何らかの作成が必要です。
〇指導教員は,成績や席次を気にしていません。むしろ成績順位が下の人ほど,研究に必要な「純粋な独創性」があると感じることが多く,望ましいと思っています。独創性は,学校教育で潰されます。潰されずに残した学生は,貴重であり,優れており,順位が低い場合が多い。留年している人,遠回りの人生を歩んでいる人,ぜひ自信を持って当研究室においでください。望ましく感じないのは,仲良しグループでまとまって入ってきてしまうケースです。卒研室には考え方が違う人が集まった方がよい。そこで一緒に悩むから,自分がスキルアップします。違う考え方に触れるのは大事なことです。ゲームオタクやスマホ依存の人も適していません。ゲーム中毒ではなく,ゲーム開発ができる人なら望ましい。次に言葉の端に「友人に言われたんですが」とか「ほかの先生に聞いてみたのですが」という人は,その場で却下します。退席を命じることもあります。理由は簡単です,「あなた」の意見を聴きたい,「あなた」のやった成果を示してほしい,「あなた」の研究を行う卒研室ですから,どんなに稚拙でも学生本人の言動が尊い。
〇学生と指導教員は対等だと思っているので,お互いの人間関係で,失礼は許しません。卒研室のパソコンでゲームをしている,教員がのぞき込んでも当然顔で続ける。外でやってください。卒研室内では失礼な行為です。しかし病気の場合は,診断書などを示すか,保護者と面談させていただいたうえで認めることはあり得ます。卒研室のものを壊す,データを読めなくする,無知で謝るのなら指導しますが,当然顔で破壊や妨害をするのも対等関係として失礼です。対等なので,教員が間違ったときは謝ります。
〇研究室は,教員が研究をする場所です。そこに学生が入ることで,研究の力をつけることができます。卒業のための研究の力をつける場所を卒研室と呼びますが,そこは研究をする場所です。学士以上の学位を持たない学生がそこに入る場合は,教員の指導を受けてください。教員の研究の邪魔はしないでください。指示に従えばよいだけです。余計なことをせず,やるべきことをやる場所です。学生と教員は対等関係ですが,教員には研究の指導をする職責があります。研究には独創性が求められるので,指示待ちや,指示に完全服従の態度は不適切です。他者の研究の邪魔をしてはいけません。
研究室では生活をしてはいけません,この意味は,食事の煮炊きや寝袋での泊まり込み,排便や性行為,出産,ネットビジネスの運営,生活のためのフリマ等の運営,などなどは禁止ということです。ただし必要性を責任者が認めれば,手続の上で許可することもあります。研究室で食事をしたり,午睡をしたりは,許されません。そのために場所ではないからです。ただしそこで軽食をとることで研究を中断するのが避けられる等の理由があれば,許容される場合があります。教員との人間関係とのうちで相談してください。
〇研究成果は12月末が締め切り,研究は年内にすべて完了してください。そのタイミングで完了した成果を,卒研成果として認めます。何も達成できていないとき,留年してください,残念なことではありますが…。特殊事情,例えば骨折で長期入院など,の時は別途対応します。
抄録原稿などの添削指導は4通りの指導をしています。1月に入って3週間にわたって朱を入れます。時には真っ赤になる修正が5往復くらいプラス軽度の修正が10往復くらい発生します。基本は原稿提出後,24時間以内に返却しますが(営業日換算です),間に合わない場合はその旨口頭で伝えることもあります。添削指導4通りの1番目は,受け取ってその場でニコニコして朱を入れずに返却します,これは期限だから約束を守って持ってきたが,内容が真っ白,スカスカの場合です。誠意は受け取った,明日もってこい,の意味です。添削指導4通りの2番目は,その場で対面面接の形で説明しながら朱を入れます。学生が大きな思い違いをしているとき,時間が許せばこの形をとります。抄録は学生が著者なので学生の言葉で書かなくてはいけない。教員名が併記されるので,教員は学生著として合格水準の書き方にする責任がある。最近は学生が「答えは一つ」と思い込んでいるので,「正解は何ですか」とか「自分は60点を超えてますか」などの,頓珍漢な質問をする。研究は,その路線上にはないので,言って聞かせる必要がある場合に,そのような対応をします。添削指導4通りの3番目は,原稿を手渡しで受け取って24時間以内(営業日換算)に朱を入れて手渡し返却します。抄録を置いて帰る場合(失礼だネ,しかし教員が捕まらないこともある)は教員が発見してから,24時間以内に学生に手渡しです。学生に会えないときは持ち帰ります。会えるまで何回も返却を試みます。手渡し原則は,対等関係の鉄則だと考えています。この手の修正は最も回数が多いです。添削指導4通りの4番目は,原稿をあずかって数日かけてびっしりと朱を入れて返却します。これには5日ほどを要します。この説明は学生本人にします。この意味は次の通り。もう最終期限まで1週間を切った,あなたの文章で書けるように指導したが,もう卒業させるにはタイミング限界を超えました。だからいけないことだが指導教員の書き方で全面改訂して卒業させます。朱を入れた通りにベタ打ちすれば,卒業させてあげますから,最後のチャンスだと思って否応なく対応しなさい。この意味です。だから,指示通りにしない場合はもう一度真っ赤に染めます。このタイミングでは期限まで残り1日を切っていると思います。これを心情的に受け入れられない学生が多いようです。なぜ指導教員が5日ほどかかるのかというと,指導教員の言葉で2ページ原稿を仕上げるからです。教員が自分の原稿として2ページを書く,しかも赤を追加する形式で証拠を残さないとまずい。複数人分を同時に対応しているとき,研究のプロといってもそれくらいは時間がかかります。学生を卒業させるための特別な配慮です。理解してください。実は添削指導4通りの5番目もあって,何も言わずに受け取ることがあります。読めば必ず修正しなくてはいけないが,もう期限が過ぎてしまって修正すると卒業できなくなる。だから,見ないで受け取る,という意味です。教員が学生を軽蔑した状況です。抄録の添削指導で,教員にさせてはいけない4番目と5番目,特に4番目は,学生が教員に原稿を書かせてしまっています。人間関係として,人にやらせるときは,「お願いします・ありがとう」と言ってください。最近は,この苦情をほかの卒研室に持ち込んで,クレームをほかの先生に言いつける人がいます。そこだけをとれば,「残り1日で真っ赤にされて対応ができない量だ」確かに教員の意地悪のように受け取れるでしょう。泣きついた先生はきっと「先生に真意を確かめてみなさい」と言うでしょう(言わない同僚を,私は信じない)。泣きついた学生と一緒に,嬉しそうに久保教員の批判をする同僚はいないと信じます。研究活動は研究室ごとにトータルで一貫しているので,逆恨みはやめてくださいね。以上の対応に理解してください。
〇卒研室には,卒研室ごとの流儀があり,研究室ごとにトータルで一貫しています。学生が提案することは,前向きに検討します。基本的に,教員は別の教員の卒研室の指導はできません。教員の指導ができる職責を有するのは校長先生のみです。研究室ごとに流儀が違うので,それを理解したうえでないと他所の卒研室を批判することはあり得ません。本校では「技科大の流儀」の研究室が多く,次に「地方大の流儀」があります。「私大の流儀」では,例えば慶應方式が多い印象です。当研究室は「東大計数工学科の流儀」で進めています。これは計測自動制御学会の母体となっている方式です。(そもそも計測工学教育は1945年の眞島正市先生の東京大学計数工学科が始まりで,次いで1957年の慶応大学計測工学科が次の主流,純粋な計測工学教育は,ほぼこの2系統です。)当研究室の特徴は,難しさよりも明確さを優先する,優しくだれでも受け入れる,何事も自分で考えやってみる,大らかに思考する,細かい分野にこだわらない,などです。本校の先生について言及するのは問題が多いので,他校の先生の例を挙げると,府立高専の梅本研,都立高専の山本研,都立大学の小野研,群馬大学の小林研,高専機構では元理事長の小畑先生(元東京農工大学学長)が,この流儀です。特徴として,社会に出てから産業に受け入れられやすい事が挙げられます。専門は持ちながら,どの部署に配属しても仕事をこなせる人材が育つからです。1人の先生にはその先生の流儀があり完結しているので,一部だけほかの卒研室と同じことをすると,何かと不具合を起こします。他の研究室の先生が嘴を挟むことではありません。本研究室の考え方は,難しさを増やさずに伸びるだけ伸びてもらうことにあります。しかも,日本でももっとも古くから成功している流儀で進めています。安心して卒研に臨んでください。小山高専以外の学外研究室との交流は,研究室HPのリンクを参考にしてください。学内外を含めた研究室と連携している部分も少なくありません。
〇指導教員の研究分野は信号処理,音響学,計測工学,振動学,応用物理,情報理論,回路設計,横断型技術などです。ものづくりが得意だと思いますが,最近は学生にベースとなる力が身についていないと感じているので(これは学科カリキュラムの責任です,学生諸君には申し訳ありません)卒業を優先すると必ずしもモノづくりを売りにしない方がよいと判断しています。ものづくりをしたい人,ぜひおいでください。道具も部品もそろっていますが,なんだか学生がほかの研究室に持ち出してしまうので,隠してあります。工具を買うと次々になくなります。教員がモノ作りをしていると,目を離したすきに壊されてしまうんです。正しい研究室のあり方に修正を試みています。以前はロボット研究,人工生命研究もしていましたが,新学科になってからは学生にそのテーマで研究を進める実力がなくなっていると判断し,そのテーマは停止しました。悔しいですが,卒業を優先させるとそうなります。
〇卒研室は子供部屋ではありません。いすにふんぞり返ってスマホなど,やめてもらいたい。
〇卒研室の使用は,いくつかの段階を経ています。まず人間力を高めてからテーマや目的が明確になった後に,カードキーを貸し出します。人数が多い時は(例えば5人),卒研生同士がお互いに考えて運営ができるので,部屋のカードキーを半年単位で貸与します。少人数の時は,学生の研究への向学度を高めながら,教員同行利用,1日貸し出し,半年貸し出しの順に進めます。卒研生が2人の時などは,1人になる機会が多くなるため,不慮の事故への対応が難しいと判断すれば,カードキーは貸与せず,教員立ち合いの時のみ利用してもらいます。卒研生が一人の方が研究がはかどる実力があると判断すれば,カードキーを優先して貸し出すこともあります。安全を第一に考えますのでご理解ください。なお,研究テーマが決まっていない段階では,キーは貸与できません。研究室の目的を上に書いてありますので,読み返してください。卒研生に研究をする人間力と研究基礎力がついた段階で,カードキーを貸し出します。卒研室の運営は教員の職責の1つです。責任が担保された上での対応をします。もともとは,卒研室を学生が使うときには,学生実験と同様に,指導教員は100%立ち合う義務があります。実際には会議等で席を外すことも少なくない。子供部屋を貸すのではなく,研究の場所を貸すということを,よく認識してください。
〇学会発表,国際会議発表は,専攻科生では必須です。大学相当の教育環境を提供できます。教員は学外大学と連携して大学院生の指導もしていますので,安心してください。卒研生の場合は,優秀な学生がいれば学会発表を勧めることがありますし,卒業後も研究発表で連名著者に加わってもらうこともあります。しかし,断りたい場合はできるだけ早めに意思表示をしてください。それによって人間関係を悪くすることはありませんし,正直なことを言うと学会発表指導は教員の負担が大きい,労働の点では過負荷です。しかし教員の熱意としては一度は勧めたい。また,小山に近い場所での学会発表の機会があるときには,一緒に発表を勧めることもあります。このような活動は,スケジュールタイトなので,断る場合は早めに断ってほしい。メモ書きなどでよいので明白に表明してください。勿論,勧めるからには受賞に近いところまで指導しますし,責任を持って対応します。これまで専攻科生の学会発表はすべて達成済み,卒研生については6名発表,3名に国際会議受賞(大学院修士修了相当)の実績があり,指導経験があります。実績は研究室HPで確認してください。
〇このような文章を書かなくてはいけないこと自体,学科のあり方に問題山積。まずは学生の成長を優先でできることをやってゆきたいと思います。誤解を生まないように,疑義はまず指導教員にお問い合わせください。ご理解をお願いいたします。

 

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